“試運転良好” これを確認して「整備作業」は終了です。

市田 智也

一等機関士
2012年入社
(2020年取材当時)

船員を目指したのは大学入学後だった

船員になったきっかけは1回生時の乗船実習です。最初は自宅から通える学校ということで神戸大学を選択し、入学当初は船員になるつもりは無く、陸上のメーカーでエンジニアとして仕事ができればいいなと漠然としか考えていませんでした。しかし、実習がきっかけで船に興味を持ち始め、進路選択の際の父の勧めもありこの仕事を選びました。入社後印象に残っているのは、初めての主機ピストン抜きです。油圧ジャッキの重さ、ピストンの大きさと長さ、クロスヘッドの大きさ、クランクケースの深さ等々、スケールの大きさに驚きました。元々車やバイクに乗る・触ることが好きなので、好きな機械を日々触っていられる機関士という職業は自分に合っていると思っています。乗船中は家族となかなか会えませんが、寄港した際に本船に家族を呼ぶと、とても喜んでくれます。職場・仕事内容や船内環境を見てもらうことで、家族の理解と協力を得るきっかけにもなっています。この仕事は、型にはまりたくない人には魅力の多い職場だと思います。船員になるか迷っている方がいたら、「挑戦してみては」と必ず勧めています。

本船でのお正月

本船は365日、昼夜を問わず動いていますが、そんな中でもとりわけ元日は乗組員一同で、とはいきませんが皆で新年を祝います。前日までに鏡餅やしめ縄を飾り、年越しそばや正月料理の準備を行います。元旦は船橋に集まり神棚に参拝し、その後は豪華な料理で正月のお祝いをします。もちろん、荷役中や、輻輳海域を航行している時は持ち越しになりますが、 共に乗船する外国人乗組員によってはクリスマスや旧正月にパーティーを開くので、つかの間の正月気分を2度味わえることもあります。

作業前ミーティング

一般に、船の仕事を「経験工学」と呼ぶ方がいますが、まさにその言葉の意味を痛感することが多々あります。作業前には必ずマニュアルや過去の整備記録に目を通した上で、作業内容によっては機関部で入念なミーティングを行い、万端の準備をもって本番に臨みます。それだけの準備を以てしても、ちょっとしたイレギュラーや瞬時の判断が求められたときに、培ってきた経験と業で手際よく対応するベテランの機関長、一等機関士は、私の目指す姿です。

やりがいとは…

主機関、発電機、ボイラー、造水器etc...船にあるすべての機器の保守整備を行うのが「機関士」の使命です。つまり、船の原動力ともいえる主機関から小型のポンプの一つまで、分け隔てなく各部の清掃・計測や必要部品の交換をしなければなりません。すべての部品を組み終えても、まだここで終わりではありません。さらにここから機器の運転状態を確認する試運転が待っています。完璧に「整備」を行ったと思っていても、やはり試運転は問題無く運転するだろうかと緊張するものです。機器は正常に「作動」しなくては意味がありません。最後に“試運転良好”これを確認して「整備作業」は終了です。作業の手仕舞いをする傍らで、自ら整備を行った機器が小気味良い機械音を奏でながら運転している...この音が聞ければそれで満足です。

HISTORY

  • 2012年10月~ 三等機関士として入社
  • 2015年4月~ 二等機関士昇格
  • 2015年9月~ 船舶管理グループ 技術管理チーム
  • 2019年1月~ 海上勤務復帰

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